徐狼三國志
この話はフィクションであり
実際の三國志とは何の関連もありません。
第九話 趙子龍
(玄徳様は百姓なども連れているということ・・・。
先陣が追いつくには2、3日もかからないだろう・・・。
まずいな・・・。)
ここは、曹操本陣である。
この本陣も普通の行軍より足を速めていた。
と、いうのもこの陣も騎馬を主力して構成されていたのである。
さて、こんなことを考えていたのはもちろん徐庶である。
徐庶が襄陽をでてから二日が経っていた。
(先陣が玄徳様の後陣とぶつかるのはそろそろだろう。
こんどばかりは孔明先生といえど・・・。
どのような策を持ってこれに対処するつもりなのだろうか・・・。)
「そろそろ先陣が玄徳の後陣とぶつかるころだろう。
われわれも急ぐぞ!!」
曹操は声を上げた。
それと同時に馬足はさらに速くなった。
翌日、真夜中に玄徳の陣と先陣がぶつかったという知らせが曹操本陣に入った。
「そうか!!こちらもうかうかしておれぬ!!出発するぞ!!」
本陣は再出発した。
本陣には逐次情報が入ってくる。
それを徐庶も聞いていた。
(先行きが悪すぎる。孔明先生はどうしているのか!?
あまりにも悲惨な結果ばかり入ってくるではないか!!)
徐庶は心の中でこう叫んだ。
さらにいろいろと悲惨な情報が入ってくる。
(なんだ、この戦況は!!まるで孔明先生がいないようだ・・・。)
そう徐庶が考えた瞬間、次のことが頭によぎった。
(孔明先生はいない!!)
徐庶は考え込んだ。
(まさか・・・しかし・・・どうして・・・。
なにか策があるのか?
いや、策ならばこのような状態になった時の策をまず実行しているはず・・・。
ならば・・・一体何のために・・・。)
そこにどこからか話し声がしてきた。
この声は荀攸と程cであった。
「まだ荊州には丞相の勢力下に入らないところがあるらしいな。」
程cが言った。
「左様、江夏太守の劉gだ。」
荀攸が言った。
「では、玄徳はそこに向っているのでは?」
「おそらくな。劉gと玄徳は交流があったらしいからな。」
「厄介ではないのか?」
「いや、大丈夫だろう。劉gの軍はおおくても2、3万までだ。
すぐに潰せるだろう。」
「孔明もいるだろう。」
「いくら孔明といえど、この兵力差は跳ね返せないだろう。」
「それももっともだな。」
「これで玄徳も終わりだな。」
この話を聞いていた徐庶はやっと孔明の行動を予測することができたのである。
(そうか!!孔明先生は劉gのもとに援軍要請にいったのだ!!
しかし、間に合えばいいのだが・・・。)
また徐庶は考え込んでいた。
(このあとはどうするのだろうか・・・。)
この答えが浮かぶのはだいぶ先のことであった。
本陣は景山のふもとまで来ていた。
曹操らは景山の頂上から戦を眺めていた。
曹操は凄まじい闘気を発していたある騎兵に気づいた。
その騎兵は曹操の兵を次から次へときっていたのである。
曹操はその騎兵を指差し、
「あれは誰だ?」
と、聞いた。
しかし、誰も答えなかった。それもそのはずである。
劉備の陣営をよく知っているのは唯一人を除いていないのである。
「徐庶殿なら知っているのでは?」
と程cが言った。
「なるほど・・・。」
曹操は呟いて、
「徐庶!徐庶!!どこにいるか!!!」
と叫んだ。
徐庶は答えないわけにはいかず、
「はい、ここにいます!!!」
と言った。
「あれは誰だ?」
「常山の趙子龍です。」
徐庶は答えた。
「あれがか・・・。さすがだ。」
この答えに曹操が目を輝かせたのは言うまでもない。
曹操はすぐれた人材については敵といえども自分の陣営に加えようとするのである。
そのこともあり、今の陣営が出来上がったのである。
「おまえたち、各陣営につたえろ!!
矢をうつな!!なんとしてでもとらえろと!!」
「丞相・・・。」
「なにをしている!!いくんだ!!」
この言葉で各将は先陣に散った。
その後、趙雲を囲む軍に厚味が更に出たことは言うまでもない。
(あの様子ではそろそろ限界が来るか・・・。)
徐庶はそう考えていた。
(まあ、なんとか囲いは通り抜けられるな)
徐庶の読み通り趙雲は包囲を突破したのである。
「さすがは趙子龍、我が包囲陣を突破したか。」
曹操はこういってすぐに、
「奴を追うぞ!!趙子龍の行く先に劉備がいるはずだ!!」
こうして、曹操の大軍はただ一騎を追いかけていったのである。
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