徐狼三國志
この話はフィクションであり
実際の三國志とは何の関連もありません。
第八話 再出発
蔡瑁が訪れてから翌日、
曹操は襄陽へ入城するという布令を出した。
蔡夫人は劉jをつれて、江の渡しまで出迎えに行き、
荊州の文武百官は城門に整列し、曹操の姿を拝した。
そして、入城の儀式を行った。
そのあと、まず、曹操はカイ越を呼び、彼をハン城侯に封じた。
また、旧重臣五人を列侯に封じた。
そして、王粲や傅巽を関内侯に封じた。
そのあと、劉jに向かって曹操はこう言った。
「あなたは青州に行くがよい。青州刺史にしよう。」
といった。劉jは、
「私は官爵などいりませんから、ここに居させて下さい。
父の墳墓のあるこの国に居たいのです。」
と、懇願したが、
「いやいや、青州は都が近い。
御成人なされたら朝廷の勧めで官人となるだろう。
出世するのだ。その方が亡き父も喜ばれるだろう。」
といった。
曹操の言ったことである。断ることもできずに、
「わかりました。」
と、ただ肯いた。
徐庶はそれを黙ってみていたがやがて呟いた。
「・・・可哀相に・・・。」
数日後、蔡夫人と劉jは青州に向かって出発した。
連れていったものは王威を含めて数人であった。
それを見届けてから曹操は于禁を呼んだ。
なにやら、こそこそと内密な話をしていたが、
やがて、于禁は走ってどこかに行ってしまった。
かと思うと于禁は屈強なものばかり数百騎をつれて襄陽を出ていった。
もと劉表の配下はこのことをなんだなんだとばかり見ていた。
その一人が徐庶に聞いてきた。
「あれは何の騒動ですか?」
徐庶は、
「私にも分かりません・・・。」
といった。実際のところ、予想はできていた。
しかし、それをこの場でいうと、曹操の耳に入りかねない。
それが原因で曹操に余計な警戒心を与えるとこのあとの行動がしにくいと思ったのだろう。
その予想が正解だと分かったのは、数日後であった。
それまでの間、曹操は落着かなかった。
それはそうだろう。明るみに出ると、荊州の基盤がボロボロになってしまう可能性がある。
于禁の知らせを聞いてから曹操はほっとしたようだ。
于禁の知らせはこうだった。
「劉j一行はだれにも見られずに葬り去りました。」
その知らせを聞いたものはごくわずかであった。
当然、徐庶のような新参者が知らされるはずはなかったが、
程cの進言で耳に入れる事はできたのであった。
曹操は毎日、荊州の政治に忙殺されていた。
ある時、荀攸が繁忙を妨げていった。
「丞相閣下。お茶でもお飲み下さい。」
曹操は、
「そうだな、いっぷく喫して、ひとときの休みを入れよう。」
といった。
「丞相閣下。今やっていることよりも大事なことがあるのではないでしょうか?」
「ん?なんだ。言ってみなさい。」
「こうしている間にも、劉備は遠くに逃げています。追いかけた方がよろしいのではないでしょうか・・・。
もし、劉備が江陵の要害に入り、そこの金銀兵糧に手を出したらどうするのでしょうか?」
曹操ははっとしたように言った。
「どうしてそれを早く言わない!!」
荀攸は驚いたように言った。
「そ、それは・・・、丞相閣下は俺をご存知でいると思いましたので・・・。」
「このような、忙しい時なのだ。大事なことを忘れてしまうだろう。
軍馬の用意をしろ!!そして、劉備を追撃させよ!!。」
と、曹操は荀攸に命じた。
徐庶は自分の部屋に居たが、外が何やら騒がしいことに気づいた。
「・・・とうとうはじまったか・・・。」
徐庶はつぶやいた。
しばらくした後、城内の大将が呼ばれ、
騎兵をつれて、襄陽を出発していった。
目次に戻る