徐狼三國志
この話はフィクションであり
実際の三國志とは何の関連もありません。
第五話 皮肉な仕事
宛城に入ってしばらくした後、曹操配下は、
みな、評定に出席した。
曹操自身が、何か意見があるらしいのだ。
この報を聞いたとき、
徐庶はまだ考えがまとまっておらず、
(もう何か仕掛けるのか?)
と、そわそわしていた。
挨拶が一通り終わった後、曹操自身が話を切り出した。
「劉備に先鋒を向かわせようと思うのだが、どうかな?」
それを聞いたとたん、皆、歓声の声を上げた。
実は、少し前に、再軍備が終わっており、
将も兵も、
「まだ、攻めないのか、まだ、攻めないのか。」
と、気持ちをたかぶらせていたのだ。
それを荀攸から聞いた曹操は、
「うむ、そうか。しかし私は政務で忙しい。
他のものに行かせるとしよう。」
といって、今日の評定にいたったのである。
「では、曹仁、曹洪を大将にする。許チョもいくがよい。
兵は10万連れて行くがよい。」
「ははっ、必ずや丞相の待ち望む報を持ち帰ります。
お待ちしていてください。」
徐庶はこの時、
(おそらくは、劉備様一行を取り逃がす事となるだろう。
多大な被害を被って・・・。
ここで一手打っといた方がよいな。)
と考え、曹操のもとへ赴いた。
「何だ、徐庶よ。」
「実は、先ほどの件でお話があります。」
「ほう、何か不満があるのか?」
「はい、曹仁、曹洪では役不足ではないかと存じます。」
「なぜそう思う?」
「恐らく、劉備一行は
新野城を捨てて、逃げるでしょう。
あの2将では、彼らを捕まえる事ができないでしょう。
さらに、孔明の策によって、痛手を被るかもしれません。」
「では、その孔明の策とはなんだ。」
「私の凡才では、わかりませぬ。」
「徐庶よ。兵が高ぶってきているのだ。
そのような状況下で、兵を出さぬは、
士気を下げる可能性がある。
遠征最初でこのような事はなってはならぬのだ。」
「しかし、ここで敗退すれば、もっと士気が下がります。」
「負けと決まったわけではないのだ。
そのような場合ばかり考えても、事が進まないではないか。
逃がす事はあっても負ける事はない。心配するな。」
「・・・・・・。」
徐庶は部屋を出ていった。
(よし、うまくいったな。後は、敗退の報を聞くだけだ。)
と、喜びながら、帰っていった。
実は、徐庶がこのような進言をしたのは、
敗退したならば、曹操は徐庶の進言をもっと聞き入れるようになるからである。
徐庶は敗退する事を確信して、このような事をしたのである。
そして、その報はもたらされた。
その報を聞いた時、
曹操は憤然として大軍で劉備を攻めようとした。
そのとき、劉曄はこう言った。
「丞相、大軍で攻め入っても、荊州の民の離反を招くだけです。
それをふせぐためにも、民の心をつかんでおくべきです。」
「では、どうすればいいのだ。」
「劉備に降伏勧告の使者を送るのです。」
「なるほど・・・。
それはいいが、誰を送るのだ。」
「徐庶をおいて他にいません。
彼は、劉備に仕えていた身で、
劉備が降伏する可能性は一番高いです。」
「ばかな!!そんなことしたら、劉備に寝返るに決まっている!!」
「いえ、寝返りません。
もし、ご信頼に背いたならば、彼は天下の笑い者になりますから。」
「なるほど、そのとおりだ。」
といい、徐庶にこれを命じた。
徐庶は、
「ああ、何たる皮肉だ・・・。」
といいながらも、背く事が出来ずに、
一人、劉備のもとへいったのであった。
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