徐狼三國志
この話はフィクションであり
実際の三國志とは何の関連もありません。
第三話 なすべき事は・・・
徐庶は戦の結果がどうなったのか、早く知りたかった。
もしかすると、その逆かもしれなかった。
徐庶が、そのことで夜も眠れないと聞いた曹操は彼の家を訪ねた。
「徐庶よ、見舞いに参った。」
「丞相!なぜここに?。」
「そなたが、戦局がどうなったかばかりを考えて、夜も寝られないと聞いたからだ。」
「ああ!ありがとうございます!」
「徐庶よ、気にする事はないぞ、
夏侯惇は勇猛な人物であり、
兵法も学んでおる。
少々、傲慢に事を進める事があるが、
それは、于禁、李典が止めるだろう。
そのために、彼らをつけたのだ。」
「しかし・・・。」
「心配するな、この私がいうのだ。
間違いない。
さしもの孔明も、こればかりはと、舌を巻いているに違いない。」
「ありがとうございます。これで眠れそうです。」
「ははは、しっかり寝るのだぞ。」
曹操は帰っていった。
徐庶はこの時に、夏侯惇は必ず敗走してくると、確信したのである。
夏侯惇のプライドは大きなものであり、
彼の行動をさしとめようとするものなら、必ず彼はさらに強引に事をすすめるだろう。
徐庶は、そうとったのである。
徐庶のよんだ通り、夏侯惇は敗走してきた。
夏侯惇は、罪人の格好をして曹操の前に現れた。
「あれをといてやるが良い。」
夏侯惇を縛り付けていた縄が解かれた。
「さて、戦の報告をしてもらう。」
「はっ、私が劉備軍を深追いし過ぎて、
細い林道に誘い込まれ、
火計をくらってしまいました。
そして、丞相閣下の将兵をあまた失ってしまいました。」
「そなたは、兵法を学んでいたはず。
なぜそのような事にきずかない。
これでは、軍の指揮は出来んぞ。」
「はっ、そのことを于禁は悟って、
私に注意したのですが、
このような事を招いてしまいました。」
「そなたは、この戦で学んだ事が多かろう。
これを機に、次はあのような惨敗をしないように心がけい。」
「はっ。」
曹操は、夏侯惇をきらなかった。
(なんて、寛大な器を持っているのだろう。
しかし、夏侯惇が斬られなかったのは残念だ。
もともと、それは転がり込んできた事であるから仕方あるまい。)
徐庶は、残念に思いながらも、曹操という人物に感嘆した。
七月下旬、曹操は兵八十万をもって、南征に乗り出すと、号令した。
徐庶は愕然とした。
(何と言う事だ、曹操自ら八十万の大軍で、新野を攻めるとは・・・。
この軍隊とまともに戦って勝てるはずもない。
かといって、曹操は今さら止めないだろう。
私はどうする事もできないのか・・・。)
しかし、止めるように、諌めた人物がいる。
孔融である。
「丞相、このような事は御止めになってください。
みだりに大軍を動かすと、恐らく、洛陽、長安以来の惨禍を招くでしょう。
兵を数多失い、民を苦しめ、天下の怨嗟は丞相にかかるやも知れません。
なぜならば、劉備、孫権ともに漢王室に背いた事はなく、攻め落とすのも容易ではありません。」
「だまれ、不吉な事を申すな!これ以上いうと、斬るぞ!さがれー!さがらぬか!」
孔融は、帰り際に、
「不仁をもって、仁を討つ、やぶれざらんや!ああ!」
といった。
しかし、それを聞いていた者が、曹操に告げ口した。
曹操は怒って、孔融親子をきってしまった。
徐庶はそのことを聞くと、
(ああ、惜しい事をした。
彼は、仁義の人、殺すには惜しい人物だったのに・・・。
自分も止めるように行っておけば、
斬られる事もなかっただろうに・・・。)
と、後悔して止まなかった。
曹操は、次の日、新野へ兵を向けた。
もちろん、その中に、徐庶がいた事は言うまでもない。
彼にとって、最大の山場を迎える事は自分自身悟ってはいたが、
自分自身が、この戦いの勝敗を大きく分けるとは思いもしなかっただろう。
彼は、この戦いが、最大最悪になるような気がしてならなかったのであった・・・。
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