徐狼三國志
この話はフィクションであり
実際の三國志とは何の関連もありません。
第十三話 所在
「では、陳封殿、お願いします。」
「いえ、陳封とお呼びください。」
「では、陳封、頼んだぞ。」
「ええ、絶対成功させて見せます。」
謀略の内容を一通り聞いた後、
陳封は改めて徐庶の謀略に手を貸す事を了承した。
「これはかなり時間がかかることとなるが、
今起ろうとする戦いの事を考えれば、
ここまでしないといけないのだ。そのことをわかって欲しい。」
徐庶はこういって、曹操の陣に戻っていった。
陳封の方は、川を下る船を用意して、
長江を下っていったのであった。
さて、徐庶が曹操の陣に戻ってくると、
みな、忙しそうに陣内を歩き回っていた。
そこに、程cが声をかけてきた。
「徐庶殿、どこに行ってたのだ!?こちらも行動を開始するぞ。」
「一体今から何をするんだ?」
徐庶が程cにたずねた。
「なにもしらないのか?
いまから、呉の境付近まで陣を移すのだ。
君も早く準備をするといい。」
これを聞いた徐庶はすぐに自分の部屋に戻って身支度をするのであった。
(とうとうはじまる・・・。漢の命運を決める戦いが・・・。)
身支度しながら決意を新たにするのであった。
曹操軍は、西は荊陝から、東はキ黄まで陣線をひいて、呉の境を威圧した。
曹操のねらいとしては、檄文だけでは、
呉は降伏しないだろうと考え、呉に圧力を加えたのである。
こうする事によって、気の弱い孫権の配下、
とくに文官が降伏を孫権に勧めるだろうと、曹操はよんだのである。
徐庶もそのことは十分に予測していた。
しかし、呉との外交で、どうしても避けて通れない人物がいる事を徐庶は知っていた。
すなわち、周瑜である。
孫策が死ぬ間際、「国内の事は張昭、国外の事は周瑜に聞け」と言った事もあり、
孫権は周瑜を非常に信頼していたのである。
周瑜の一言で孫権が動くといっても過言ではないのである。
つまり、呉との外交の上で、
周瑜を仲間につける事は外交を成功させる事に等しいのであった。
曹操はそのことを逃していたのである。
そこで、問題になってくることは、劉備の動向である。
劉備も当然ながら呉にたいして魏との開戦をもちかけるだろうと徐庶は予想していた。
問題は誰が呉の使者として赴くかであった。
呉への使者は当然、周瑜の事を頭に入れておかないといけないのである。
いや、孫権自身の説得より、周瑜の説得の方が大事なのである。
(孔明先生が使者として赴くのが一番なのだが・・・。)
徐庶はこのように期待していたのだが、
この期待が見事現実のものとなったのは、皆さんの知っているところである。
さて、呉で曹操の使者と劉備の使者が壮絶な舌戦を繰り広げている頃、
徐庶は、地元の人といろいろ話していた。
この事が曹操の耳に入り、徐庶は曹操に呼ばれた。
「徐庶よ、おまえは最近、軍の仕事をせずに地元の漁民とばかり話をしていると聞いたが、
一体どういう事だ?まさか仕事をサボっているわけではあるまいな。」
曹操は念を押して徐庶に聞いた。
「丞相閣下は戦の達人でありますが、
戦いに勝つ為に必要な”三つの利”をご存知ですか?」
徐庶は逆に曹操に聞いた。
「天の利、地の利、人の利であろう。」
「そうです。天の利については、
丞相閣下は天使を擁立しているから得ているといってよいでしょう。
人の利については、大変な兵力を持っていて、
有能な人材を抱えている丞相閣下は、これを得ているといってよいでしょう。
問題は地の利であります。
私達はこの地域の事をよく知っているわけではないので、
これをまだ得ていないといってよいでしょう。
だから私は、地の利を得る為にも、こうして情報収集を行っているのです。」
「なるほどな、さすがは徐庶だ。これからもその件は頼む。
ただ、臨時収集の時に顔を出さないのは困るぞ。」
「わかりました。」
こうして、徐庶は再び情報収集に明け暮れるのであった。
曹操は徐庶の真意がホウトウの所在である事を知らずに・・・。
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