徐狼三國志
この話はフィクションであり
実際の三國志とは何の関連もありません。
第一話 徐軍師の隠遁と策謀
徐庶は程cの偽書にだまされ、
母が思いつめて自殺してしまい、
自分の非力さに嘆いていた。
「ああ、私にも孔明先生ほどの知力があれば・・・。
いったいこれからどうすれば・・・。」
徐庶も思いつめていたが、母の碑を訪れることとした。
母の碑は、曹操が徐庶を慰めるために作ったものであった。
「母よ、ああ、私は母にも見捨てられ、
いったいどこをより所にして生きてゆけばよいのじゃ・・・。」
もちろん、母が生き返って返事をするわけでもなく、徐庶は家に帰った。
家に帰ると、そこには、いろいろな飾り物が置いてあった。
もちろん、これも曹操の褒美であり、
徐庶は捨てる事もできずに、とりあえず、飾っておいたのであった。
徐庶はほとんど丞相府に勤務していない。
母の死でやる気がなくなってしまい、いつも、花を見ているばかりであった。
その日の朝、曹操が自ら赴いて、自宅に招待してくれるといったので、
断る事もできずに、ただ気力なげに返事をして、曹操宅の庭園に行った。
「徐庶よ、未だ母の死が頭に残っていると見える。
そろそろ、立ち直って、仕事に精を出してはくれぬか。
みなも、それを待ち望んでいるのだぞ。」
「はあ・・・。」
「君が相当な親孝行者であると聞いている。
だが、このまま呆けていれば、天国の母もそなたを見捨てるぞ。
母の為にも、精いっぱい力を尽くしてはどうだ。」
「・・・。」
しばらくした後、ようやく徐庶は重い口を開いた。
「私は、親不孝者です。
母に何もせず、自分勝手に旅をしてまわり、
挙げ句の果てに、母を自殺に追い込んでしまった。
私は、親不孝者だ・・・。」
「君は親孝行を行動の範囲でしかとらえていない。
何よりも大事なのは真心であると、どうして思わない。」
「真心があれば、母も自殺しなかったでしょう。
即ち、私には、真心がなかったと言う事です。」
「・・・。」
曹操も口をつぐんでしまった。
これだけいわれると、曹操も重い空気をまに受けてしまうのである。
それだけ、曹操も親には深いものを持っていたのであろう。
徐庶は一度考えてから、こういった。
「しかし、丞相のいう事も肯けます。
このままいても、母に本当に見捨てられてしまう。
あした、丞相府に赴きましょう。」
「そうか、よく言ってくれた。礼を言うぞ。」
「いいえ、礼を言うのは私の方です。
今日、親孝行の真髄を知ったような感じがします。」
この後、徐庶は曹操と飲酒を交わし、家に戻ってきて、早々に床に就いた。
この日、徐庶は夢を見た。母の夢である。
「元直や、元直や」
「母上!」
「元直や、よく立ち直りました。この時をいつまで待ち望んでいた事か・・・。」
「母上、これからは、せめてもの罪滅ぼしに、力を尽くします。」
「それでこそ、我が子どもじゃ。
いいか、よく聞くのじゃ。
曹操に天下を渡してはならぬ。曹操の後ろには飢えた虎が見える。
虎に、大きなえさを与えると、好き放題にしはじめるのじゃ。
そして、世を滅ぼす。」
「母上、いったいどうすれば・・・。」
「いいか、もはや今となっては、劉備様に仕える事もできぬ。
そこでじゃ、そなたは陰となって、後ろから劉備様を盛り立てるのじゃ。
即ち、自らは、表に立たず、策略を練り、必要なときだけ発言し、事を進めるのじゃ。」
「いったいどうすれば・・・。」
「馬鹿者、そのような事を母に聞いてどうする。
そのような弱気であるからこそ、偽に惑わされるのじゃ。
私の納得が行かぬまで、ここに来る事は許さぬ。
私の納得が行くまで、親孝行したとはいわせぬ。」
「そんな・・・。」
「しかし、いきなり言われても難しい事じゃろうから、一つ教えよう。
いいかな。明日、劉備様のもとに孔明殿が仕えたという知らせが、丞相府に入る。」
「それで?」
「それだけじゃ。あとは自分で考えよ。」
「えっ、それだけですか。」
「では、私もそろそろ戻るかの。期待しておるぞ。」
「母上、それでは少なすぎでございます!
もっと、何か情報を!母上!ははうえー!」
「はっ!」
徐庶は目が覚めた。
「・・・。母上はあのような事をおっしゃった。
一刻の時間も許されないぞ。
私は、親孝行を行う!」
徐庶はここで心を決め、明日の事に備え、策を練りはじめるであった。
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